2015年秋学期は、スペードマークが付いた項目を詳しく講義するというスタイルにしたので、板書の写真を公開します。
東京大学 教養学部 文科1,2年生向け講義
物理科学II 2013-2016, 2018
講義内容:
時間と空間と物理学
物理学の発展は、我々の、時間や空間に対する理解や見方までも変えてゆく。そのことを、アインシュタインの1905年の特殊相対性理論による大革命を例にとって解説し、その壮大な風景を垣間見てもらうことが本講義の目的である。
物理の考察の対象は広大だが、もっとも簡単な対象は、たった1個の粒子である。この講義では、その1個の粒子の運動を考えるだけでも、すでに、時間や空
間に関する根本的な考察が必要になることを示すことから始める。そして、時間に関して、「時間は万物にとって等しく流れる」というきわめてもっともらしい
仮定をおき、それに加えていくつかの「さらにもっともらしい仮定」もおく。それらの仮定の下に、既知の実験結果を参照しながら、論理を積み重ね、様々な論
理的帰結を導く。こうして、アインシュタイン以前の理論である、ニュートン力学に到達する。
一方で、少し観点を変えて、「はたして、影響や情報が遠方に伝わる速度に上限があるのだろうか?」という問いを発してみる。ニュートン力学を正しいと認
めると、上限がないことが結論できる。しかし、「上限がある」というのもまた、「きわめてもっともらしい仮定」ではないか?そこで、「影響や情報が遠方に
伝わる速度には、上限がある」という仮定を出発点に据えてみる。それに加えて、ニュートン力学を導いたときと同様の、「さらにもっともらしい仮定」もお
く。それらの仮定の下に、論理を積み重ね、様々な論理的帰結を導く。すると、ニュートン力学の根本的な仮定であった、「時間は万物にとって等しく流れる」
という「きわめてもっともらしい仮定」が否定されてしまう!
こうなると、どちらの理論が正しいかは、実験で判断するしかない。全ての実験結果は、相対性理論を支持した。その結果、「時間は万物にとって等しく流れ
る」という、人類が、おそらく地球上に現れてから1905年になるまでの数百万年の間ずっと信じていたであろう常識が否定されてしまったのだ。その常識が
正しいように見えていたのは、測定精度が低い、または、測定対象が限定されていたために過ぎなかったのだ。
以上のような壮大な知的冒険は、単なる「お話」レベルの講義では、味わうことは不可能である。そこで、物理学を理解するのに(現在知られている中で)最
良の言語である数学を使いながら、できるだけきちんと教える。もちろん、必要な数学の知識はその場で全て教えるが、論理を何段も積み重ねて結論に達するの
で、真剣に学ばないと全く何も理解できないだろう。しかし、真摯に学べば、最後には、壮大な風景を垣間見てもらうことができると思う。
板書の写真を公開します:
2016年版
2015年版
2014年版
2013年版
誤字・脱字がありますが、ご愛敬ということで…。
教養学部 統合自然科学科 講義
数理科学概論 2014年 第11回
講義内容:
物理状態とは何か?
自然科学では、「状態とは何か?」を考えるところから始めるべきである。しかし、現実には、そこをスキップしてして議論を進めてしまうことが多い。そのために、学習や研究がかなり進んだところで、急に分からなくなってしまうことが少なくない。そこでこの講義では、自然科学における「状態」や「物理量」の一般的な定義を解説し、古典力学や量子力学のような個別の理論がどういうケースにあてはまるのかを説明する。
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誤字・脱字がありますが、ご愛敬ということで…。
大学院(広域科学専攻相関基礎科学系)講義
非平衡熱統計力学 2014年
講義内容:
非平衡熱統計物理学の基礎
線形応答を中心に、非平衡熱統計物理学の基礎を講義する。時間が許せば、最近の発展についても解説する。なお、この講義は相関基礎科学系Cグループの、コア科目のひとつに指定されている。
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大学院(広域科学専攻相関基礎科学系)講義
量子物理学 2012年
講義内容:
量子統計力学の基礎的問題に関する最近の発展
統計力学の基礎的問題については、従来は古典系を対象にすることが多かった
が、近年、量子系を対象にした研究が著しく進展しつつある。古典系と違って量
子 系は、自然な測度を備えていることや、純粋状態でも確率的性格を持つこと
など、本質的に統計力学と相性が良い。そのために、古典系では見えなかったこ
と が、量子系を対象にすることで、初めて明確に見えてきたのである。これら
について講義する。特に、1個の量子純粋状態が持つ統計力学的性質を明らかに
し、 アンサンブルを用いない統計力学の新しい定式化を解説する。さらに、時
間が許せば、線形応答理論の基礎的問題についても解説する。
1.概要
2.統計力学の原理の復習
3.等重率の本質
4.マクロ系の1個の量子状態の性質
5.アンサンブルを用いない統計力学
6.ミクロ状態のマクロ純粋状態への分解
7.アンサンブルの等価性にかかわる問題
8.可積分系は熱平衡化するか?
9.線形応答理論の基礎的問題
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誤字・脱字がありますが、ご愛敬ということで…。
大学院(広域科学専攻相関基礎科学系)講義
多体系の理論 2009年
講義内容:平衡統計力学についてやや高度な事項と線形非平衡統計力学
と非線形非平衡統計力学について既に知られている(確立している)が見落とされがちな事項を講義する。時間が余ったら最近の話題にも触れる。
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京都大学基礎物理学研究所 集中講義
量子非平衡統計力学 2010年
講義内容
非平衡統計力学は、基礎物理としても、応用物理としても、極めて重要であり、活発に研究
されている。 線形非平衡領域については、既に理論が確立している(いわゆる線形応答理論)ものの、現実には、多くの重要な事項が、あまり認識されていな
いのが実情である。 また、非線形非平衡領域については、平衡状態のまわりの外場に関する摂動展開で扱える領域での理論は、ほぼ確立されている。しかしな
がら、線形非平衡領域と同様に、多くの重要な事項が、あまり認識されていないのが実情である。 そこで、本講義の前半では、これらの領域について、見落と
されがちな事項を講義する。 さらに、平衡状態のまわりの摂動展開で扱えない非線形非平衡領域では、普遍的で、物理として意味のあるような関係式は、ほと
んど発見されていない。即ち、今までに発見されていたのは、(直接は実験できないような)形式的な関係式とか、特殊な系でのみ成立するような普遍性に乏し
いものばかりであった。 ところが最近、普遍的で、直接実験にかかるような関係式が見いだされた。本講義の後半では、これについて解説する。
1. 非平衡統計力学
2. 線形非平衡領域
3. 非線形非平衡領域
3.1 平衡状態のまわりの外場に関する摂動展開
3.2 平衡状態のまわりの摂動展開で扱えない領域
4. 非平衡定常状態における普遍的関係式
4.1 非平衡定常状態の線形応答
4.2 非平衡定常状態の非線形応答
東京大学 教養学部 文科1,2年生向け講義
物理科学II -- エネルギー保存則 2009年
(文系の学生に、エネルギー保存則をちゃんと教える、という野心的な講義です)
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全学自由ゼミナー
ル「アインシュタインと現代物理学」
講義ノートの内容についての、
御意見・御質問を歓迎いたします
- 「どうか単位を下さい」とか「試験はいつですか」 といった類の、講義ノートの内容自
体とは
無関係なメールはお断りします。
- 他の人の書いた本の記述については、「講義ノートとここが矛盾しているが、どうなっているん
だ?」という質問には、できるだけお答えするつもりですが、単に、「この本のここを教えてくれ」と
いうような、講義ノートの内容とは無関係な質問は、お答えしません。そういう質問は、その本の著者にすべきです。
- 返事には、数ヶ月以上かかる可能性があります。また、どこの誰とも名乗っていないメールには、いっさい返事はしません。怖いですから。
以上を承知していただいた上で、
shmz (=^..^=)
as2.c.u-tokyo.ac.jp
まで。 ((=^..^=)を半
角の
@に置き換えたアドレスに送信してください)