エネルギー保存則

  エネルギー保存則は、物理学で最も重要な法則のひとつであるが、物理学に留まらずに、化学、生物、工学、社会問題など、きわめて広い分野にわたって、その 礎のひとつとなるような重要な法則でもある。たとえば、世情を賑わすエネルギー問題や環境問題を考えるときも、最も重要な基礎概念のひとつである。

 ところが、テレビのキャスターなどの発言を聞いていると、エネルギー保存則すら知らないままこれらの問題を論じている事が少なくないように見える。そういう人々が社会に影響力を持っているようでは困る。

  しかし、考えてみれば、日本で、高校ぐらいの早い時期から文系の教育を受けた場合には、エネルギー保存則をほとんど教えられていないはずだから、このよう な哀しい状況は、教育プログラムの欠陥のためにもたらされたものであろう。そこで、文系の教育を受けてきた学生諸君に、エネルギー保存則について、可能な 範囲で教えることを試みようと思い立った。

 単なる「お話」レベルでは結局は何もわからないので、(エネルギー保存則を含む)物理学を理 解するのに(現在知られている中で)最良の言語である数学を使いながら、できるだけきちんと教える。もちろん、必要な数学の知識はその場で全て教えるが、 論理を何段も積み重ねて結論に達するので、真剣に学ばないと全く何も理解できないだろう。しかし、真摯に学べば、最後には、エネルギー保存則が、「時間が 経っても物理法則は変わらない」ということの帰結である、という深遠な事実までも理解できるであろう。