学問に誠実な人々

04-04-28

 

先日、「新版 量子論の基礎」という本を出版した。これは、昨年出版した「量子論の基礎」という本を大幅に加筆したものである。その理由などはここをご覧いただくとして、この2冊の本の出版の作業では、じつに多くの人々に助けていただいた。そして、それを通じて「学問に誠実な人々がたくさんいて嬉しいな」と素直に感激した。

 

このような、人真似でないような本は、決して一人だけの力では生まれない。著者の方針に(全面的ではないにせよ)賛同し、協力してくれる人々がいて、始めてちゃんとした本を出版することができる。それが判っているなら、早めに書いて多くの人に草稿を配って意見を求めれば良さそうなものなのだが、生来の(?)原稿書きの遅さのため、いつも、出版スケジュールからしてギリギリの時期になってようやく草稿を送ることになる。つまり、年末年始から入試の季節にかけての、大学関係者がいちばん忙しい時期に、である。それにもかかわらず、実に多くの人たちが協力してくださったのである。

 

どんなに誠実に協力していただいたか、ちょっと具体例を書いてみよう:

 

○習○の田○さん(別に犯罪者じゃないから伏せ字にすることもないのだが…)は、年末年始に分厚い原稿すべてを通読し、詳細なコメントを記入したものを、正月の3日に(!)速達で僕に送って下さった。(ごめんなさい>田○さんの奥様)

 

学部4年生だった○川さんは、何ヶ月にもわたって、次々に書きかえられてゆく僕の原稿全てに目を通して下さり、学部生にとって判りにくい表現を全てチェックして下さった。チェック箇所をメールで知らせる文章を書くだけでも、信じられないぐらいの労力である。

 

○○○科大学の宮○くんは、彼が元は僕の学生だったという気軽さから、「あれ?ここはどうだったっけ?」というような質問メールを(正月に!)気軽に送っても、「自分で調べなさい」などとは怒らずに、丁寧に答えて下さった。

 

このような多大な労力を払ってくださったのは、清水個人のためではない。(清水にはそのような人望はない…(^_^;))新しい量子論の教科書を生み出すという仕事に学問的な意義を感じ、協力して下さったのである。つまり、その人たちの学問に対する誠実さが、多大な労力を惜しみなく払って下さった原動力なのである。このような新しいタイプの本を書くのは正直言ってしんどかったし、協力していただいた方々にも編集の方にも迷惑をかけて申し訳なかったとおもう。しかし、その収穫は、この本が世の中の役に立つことだけではなく、学問に誠実な人々と言葉やメールを交わせたことも大きかったのであった。