量子測定理論入門

last modified: 2009/04/22   first appeared: 2007/06/05

追 記 09/04/22: 先日、素粒子論のグループのセミナーに、このネタで呼んでいただいたので、coherent stateと測定理論の関係の記述を追加しました。公開するスライドを、そちらに更新しておきます。

追 記 08/04/22: 本日、統計物理の研究室のセミナー(MITセミナー)に、このネタで呼んでいただいたので、揺動散逸定理の実測例を追加しました。公開するスライドを、そちらに更新しておきます。

追 記 07/06/08: 本日、AMO 討論会での話を終えてきました。意外と、ウケました。こういう話 をするのも必要だなと改めて思いました。そこで、話を聞けなかった方々のために、今日の講演「現代的な量子測定理論の概要―FAQsへの答え」のOHPを公開します。



現代的な量子測定理論の枠組みぐらいは、量子論に関心がある人・使う人全般に、広く知ってもらうべきだとかねがね思っている。

そこで、量子論の基礎の続編である「量子論の発展」には、現代的な量 子測定 理論の概要も解説する予定である。しかし、ここの「今後の出版(した方がいいかなと思う)物のリス ト」にあるように、他の本の予定が先にあるので、執筆がいつになるかわからない…。

そこで、当方の大学院(総合文化研究科)の講義では、現代的な量子測定理論の概要を解説したりもしているのだが、明らかにそれだけでは不十分である。しか し、一般的なセミナー程度の時間では、とても理解してもらえるとは思えない。講義でも、具体例をやる所までは時間的余裕がなかったので、どれだけ伝わった か自信がないくらいなので…。

というわけで、八方ふさがりのような状態だったのだが、今回、AMO討 論会で量子測定理論について話す機会があるので、短い時間でどの程度伝えられるか、思い切って挑戦してみることにした。以下にその概要を記しま すので、興味のある方はどうぞ(…って、もっと早くからアナウンスしろよ>自分)




量子測定理論というと、昔は、実験では区別が付かないような事を議論するような、形而上学・神学の趣もあった。その状況を大きく変えたのはR. Glauberの1963年の有名な論文であろう。そのノーベル賞受賞の対象になった論文で彼は、被測定系に測定器の一部を加えた複合系をひとつの量子系 として扱うことにより、

(i) 被測定系に対して射影仮説を用いたのでは実験と合わないケースがある

(ii) 測定器に対して射影仮説を用いれば常に実験と合う整合した理論ができる

(iii) 測定器の誤差や反作用も、量子論で矛盾なく計算できる

などを示し、現代的な量子測定理論の扉を開いた。これにより、量子測定理論 は、実験により厳しくその正誤が判定される自然科学の理論へと大きく進化し、その後の大発展に繋がっているのである。特に精密実験の分析には、量子測定理論はなくてはならない存在になってい る。

ところが、このような現代的な量子測定理論の姿を知る物理学者の割合は少ないのが現状である。そこで本公演では、K. Koshino and A. Shimizu, Physics Reports  412 (2005) 191の第4節にある現代的な量子測定理論のreviewに基づいて、現代的な量子測定理論の概要を解説し、量子 測定に関するよくある質問(例えば、測定はいつ終わるのかとか、 Heisenberg cutはどこにとればいいのか等)の答えをお話しする。また、標準的なコパンハーゲン解釈は、現代的な量子測定理論の教えに従って正しく使えば、今のところ全く不都合はなく、別の様々な解釈は、自然科学としては単なる言い換えに過ぎないことも指 摘する。