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本書の初版は,幸いにして,学部学生からプロの研究者まで,幅広い層の読者に受け入れていただき,何回も増刷を重ねました.
ただ,解りにくいというご指摘を受けた部分もありましたし, 書き切れなかったことも少なからずありました.
そこで,大幅な改訂・加筆を行うことを決断し,「第2版」として出版することにいたしました
結果としてページ数が大幅に増えたので,二巻に分けました.
New: 電子版も出ました



初版との違いは:
第I巻は、初版の該当部分をさらに精密化して改良することにより、 若干の新しい項目を加えながらも、初版では307ページあった部分を300ページに縮めたものです。

第II巻は、初版では78ページしかなかった部分が198ページに拡大されたことからわかるように、初版の内容を改良しながら完全に含んだ上で、その 1.5倍以上の新しい内容を新たに加えたものです。ですので、特に第II巻は、初版をお持ちの方にも満足していただけるのではないかと思います。

詳しくは、第2版への序と、 詳細目次と、 索引をご覧ください.



清水明

熱力学の基礎 第2版 I

裏表紙左下の縦の棒は,第I巻を表すIを猫の尻尾の数で表したものです.
印刷ミスではありませんので,ご安心を.
第II巻では2本になり,裏返しになっていても I, II の区別が付くようになります.

学生の方へ: 本書を教科書とする講義を受講される方へ
「問題2.1がわからない」という質問が来たので、その補足説明を新たな問題 の形で書きました(赤字の部分)。ご参考にしてください。

教員の方へ: 本書を教科書にして講義される教員の方のための御参考

I, II巻共通索引: 第I, II巻を通しての索引です(PDFフィル)

正誤表など
第2版 I 第1刷から第2刷への修正・改良点(PDFフィル)
第2版 I 第2刷から第3刷への修正・改良点(PDFフィル)
第2版 I 第3刷から第4刷への修正・改良点(PDFフィル)
第2版 I 第4刷の印刷後の修正・改良点(PDFファイル)(随時更新中!)


熱力学の基礎 第2版 II

特に、一次相転移をこれほどきちんと解説した教科書は、おそらく世界初だと思います。
初版でも一次相転移は詳しく書きましたが、一般論を大幅に加筆して、さらに多成分系の実例化学への応用まで書きました。
相加変数を出発点にとったことのメリットが最大限に発揮されます。
外場で不均一が生じる場合でも, 強い重力で温度が不均一になってしまうような場合でも、 びくともしない本書の公理系のメリットが発揮されます。
また、「内部エネルギー」を自由に選べるというメリットも生かされます。 そこから、わかりにくい「電気化学ポテンシャル」の概念も自然に理解できるでしょう。

正誤表など
第2版 II 第1刷から第2刷への修正・改良点(PDFフィル)
第2版 II 第2刷の印刷後の修正・改良点(PDFファイル)(随時更新中!)



講義のシラバスとの関係

東京大学教養学部前期課程では,理科I類向けに「熱力学」が,理科II, III類向けに「化学熱力学」が,必修講義として開講されています.
それらの教科書として本書を使用する場合のガイドラインを記しておきます.他大学の授業の際にもご参考になるかと思います.

第I巻は,「熱力学」のシラバスの内容を包含したうえで,そこに不足している要素を加えて論理を再構成して,高い視点から理解できるようにしたものです.
第I巻のうちの,スペードマークがない部分だけで十二分な内容になります.

そこに第II巻の第16,19章を加えれば,「化学熱力学」のシラバスの内容も包含できます.
やはり,スペードマークがない部分だけで十二分な内容になります.
「化学熱力学」の教科書を読んでモヤモヤしていた事項が,第I巻からの首尾一貫した論理体系ですっきりと理解できるように書いたつもりです.
ただし,これは,「熱力学」と「化学熱力学」の両方の単位を取得できるような内容(+高度な内容)になりますから,「化学熱力学」だけの授業であれば,下の「化学熱力学の教科書として使用する場合」の内容で十二分です.

第15章は,いずれのシラバスにも顕わには書いてない事項ですが,熱力学のややこしい計算を見通しよく行うためのガイドです.
「熱力学」でも「化学熱力学」でも役に立つと思います.

まとめると,次のようになります:

熱力学の教科書として使用する場合:
第I巻のうちのスペードマークがない部分

化学熱力学の教科書として使用する場合:
 以下の章や節のスペードマークが付いていない所
1.4節, 2.3節, 2.5-2.7節, 3章,4章,5章(定義と定理だけ),6章,7章, 9章(定義と定理だけ),10章(定義と定理だけ), 11.4節,12章(定義と定理だけ), 13章, 14.1-14.5節, 16章, 19章

「熱力学」と「化学熱力学」の両方の内容を包含する授業の教科書として使用する場合:
 第I巻+第II巻16章, 17章, 19章のうちのスペードマークがない部分



本書の熱力学の基本原理(要請I,II)を1ページにまとめたPDFをここに置いておきます。
これを手元に置いて読むと便利だと思います。



熱力学の基礎 [第2版] 目次

I ー 熱力学の基本構造


第1章 熱力学の紹介と下準備
第2章 「要請」を理解するための事項
第3章 熱力学の基本的要請
第4章 要請についての理解を深める
第5章 エントロピーの数学的な性質
第6章 示強変数
第7章 仕事と熱 — 簡単な例
第8章 準静的過程における一般の仕事と熱
第9章 2つの系の間の平衡
第10章 エントロピー増大則
第11章 熱と仕事の変換
第12章 ルジャンドル変換
第13章 他の表示への変換
第14章 大きな系・小さな系

II ー 安定性・相転移・化学熱力学・重力場や量子論


第15章 熱力学量を別の熱力学量で表す方法
第16章 熱力学的安定性
第17章 相転移
第18章 秩序変数と相転移
第19章 化学への応用
第20章 外場で不均一が生じる系の熱力学
第21章 統計力学・場の量子論などとの関係



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